足立としゆき夢だより【第131号】をお届けします
皆さん、こんにちは。
足立としゆきです。
台風15号の暴風により、千葉県を中心に家屋被害や大規模停電、断水など深刻な被害が続いています。皆さんのところはいかがでしょうか?
こうした被害を見ていると、地球温暖化に伴い海水温が上昇し、これまであまり経験してこなかった被害が発生する、そうしたことが毎年のように各地で起こっているのではないかと思います。
こうした被害を見越して、あらかじめしっかりとした対策を立てて取り組んでいくことが今後必要と考えますので、国土交通省にはご検討をよろしくお願いいたします。
なお、この9月の人事に伴い、議院運営委員会の理事及び参議院自民党国会対策副委員長を辞し、新たに参議院自民党副幹事長を拝命いたしました。引き続き全力で頑張って参りますので、ご指導、ご支援をよろしく申し上げます。
さて、最近の動向です。
【参議院議院運営委員会欧州視察】
参議院議院運営委員会の末松信介委員長及び与野党理事8名で、海外との議会間交流を目的としてイギリス、ポルトガルの議会を訪問することとなり、9月2日(月)に、議運の事務方とともに日本を出発し、時差がありますので、当日中にロンドンのヒースロー空港に到着しました。
翌3日(火)、EU離脱問題「ブレグジット Brexit」で揺れるイギリス議会を訪問しました。
まず、この日から開会されたばかりの上院本会議の質疑を議場にて傍聴させていただきました。ちょうどイギリス議会では、EU離脱の期限延期を求める法案が下院に提出され、ボリス・ジョンソン首相が総選挙に打って出る意向を示すなど、先行き不透明な状況でしたが、このような緊迫したタイミングで本会議中の議場を直接体感させていただくことができたのはとても貴重な経験だったと思います。
また、ビスカウント・トレンチャード議員、ランズレー議員、ハウエル議員など英日議連の保守党の上院議員3名と意見交換をさせていただきました。やはり話題は「ブレグジット Brexit」一色でした。
なお、イギリスでは、社会・経済活動に大きな影響が予想される「合意なき離脱」への懸念が強く、国会議事堂の周辺は賛成・反対両派のデモでごった返している状況でした。
また、国会議事堂は世界遺産に登録されていますが、全面改修中で、残念ながらビッグベンの愛称で有名な時計塔も工事用の仮設足場で覆われていました。
夕方、日本企業関係者との意見交換会が開催され、EU離脱問題への懸念や活気溢れるロンドンの都市再開発の動向などについてお話を伺うことができました。ありがとうございました。
9月4日(水)、バスで2時間かけてロンドン北部のケンブリッジに伺い、ケンブリッジ大学で中世日本史を専門とするミカエル・アドルフソン教授に面会し、意見交換をさせていただきました。
教授は、私の母校京都大学に留学の経験があり、日本語もとても堪能です。
教授からは、ケンブリッジ大学で日本を中心に学際的研究を進めるケンブリッジ・ジャパンセンター設立のご提案をいただきました。なんとか実現したいものです。
夕方、ロンドンに戻り、議員会館で開催された「日本大使館・英日議連共催ラグビーW杯開催直前レセプション」に参加させていただきました。
日本で9月20日(金)から開催されるラグビーW杯に向けてお互いの健闘を讃えましたが、イギリスでも大いに盛り上がっていることがわかり嬉しい想いでした。
続いて、大使公邸で鶴岡大使から現地情勢についてブリーフィングを受けました。ありがとうございました。
9月5日(木)、ロンドンレガシー開発公社の幹部の案内で、2012年のロンドンオリンピックのメイン会場のオリンピック・パークに伺いました。
陸上競技場は、現在は多目的施設としてプロのサッカーチームのフランチャイズのサッカー場として使われていますが、陸上競技場やコンサート会場、イベント会場としても使われているとのことでした。
東京の新国立競技場も、オリンピック後の利用計画が議論になっていますが、サッカー・ラグビーなどの球技場ではなく、多目的施設として運営することを検討していただきたいと思います。
続いて、英国議会に伺い、英日議連所属の下院議員で、労働党のロジャー・ゴッシフ議員、ポール・ファレリー議員、ジョン・グローガン議員、保守党のシェリル・ギラン議員と意見交換を行いました。話題はもっぱらブレグジット(Brexit)でした。EU離脱の期限延期を求める法案が下院で可決されたタイミングで、緊迫した雰囲気を直接感じることができました。
その後、有名なデパートのハロッズの近くに昨年新設された日本のアンテナショップ「ジャパンハウス」に伺いました。日本の文化や伝統、さらには物産を紹介する大変しゃれた施設で、大人気とのことでした。
この施設は、ブラジルのサンパウロ、アメリカのロサンゼルスに次いで設置されたものですが、日本の文化をはじめ多様な魅力を発信できる重要な施設ですので、今後世界的に数を増やしていくことが大切だと感じました。よろしくお願いいたします。
その後、ヒースロー空港からポルトガルのリスボン空港に移動しました。
9月6日(金)、日本のJETROに相当するポルトガルの貿易投資振興庁に伺い、エンリケス長官と面談しました。長官からは、日本の企業のポルトガル進出への強い要請がありました。
午後からは、リスボン市郊外のカレガド市にある日本からの進出企業YKKの工場を視察しました。とてもクリーンな工場で高性能な製品をシステマチックに製造していました。日本から派遣されているのは社長1人ですが、従業員のポルトガルの皆さんとの素晴らしいチームワークで頑張っておられました。
9月7日(土)、日本企業関係者との意見交換会が開催され、ポルトガルへの企業立地の今後の可能性や課題などについてお話を伺うことができました。ありがとうございました。
9月8日(日)、リスボンから200kmほど北のコインブラ市のコインブラ大学に伺いました。
大学では法学部長に世界遺産にも登録されている施設の案内をいただきました。
続いて、リスボン大学のクリスティナ・カステルブランコ教授に市内の史跡でもある「涙の館」をご案内いただきました。日本ともご縁の深い造園学の教授で、施設内に枯山水の日本庭園も設置されていました。
9月9日(月)、共和国議会に伺い、まず議事堂内をご案内いただきました。元は修道院、そして宮殿として使われていた荘重で歴史的な建築物です。
ポルトガルでは、二院制から一院制に変わったため、現在では貴族院の本会議場は別途の目的で使われているようでした。
その後、議事堂内の会議室で、ポ・日友好議連の副会長のドゥアルテ・アルベス議員(共産党)、アナ・リタ・ベッサ議員(民愛党)、アントニオ・トパ議員(社会民主党)の3名の議員と意見交換を行いました。
コパ議員のお嬢さんは東京在住で、隈研吾事務所で勤務しておられるそうです。
続いて、首相補佐官で国会担当のドゥアルテ・コルデイロ副大臣と、議事堂内の会議室で意見交換を行いました。少数政党の連合体が政権を担っており、大変ご苦労されているようでした。
9月9日(火)、日本に戻る議運の調査団の皆さんとともにミュンヘンまで移動し、私だけ離脱させていただき、「欧州近自然川づくり調査団」(団長:辻本哲郎名古屋大学名誉教授)の皆さんと合流しました。
なお、議運の調査団の皆さんは日本で大きな被害を生じた台風15号の影響を受け、ミュンヘン空港での乗り継ぎ便が来なかったため、フランクフルト空港に移動して1泊して羽田空港に戻るルートに変更になりました。お疲れさまでした。
【欧州近自然川づくり調査】
9月9日(火)に合流した「欧州近自然川づくり調査団」は、過去に日本に紹介された「多自然型川づくり」にも大きな影響を与えたドイツやスイスの「近自然河川工法」の現場を訪れ、現時点でどのような効果を発揮しているのか検証し、今後の日本の川づくりに生かすことを目的としており、学識者や行政関係者で構成されています。
調査場所の選定や現場の案内は、スイス在住で長年にわたり日本とドイツ・スイスの近自然川づくりのつなぎ役として活躍してこられた「スイス近自然学研究所」の山脇正俊さんにお願いしました。
山脇さんには、平成7、8年の2回、私が所属していたダム水源地環境整備センターが主催した「欧州応用生態工学調査団」の視察の際にもお世話になっており、それ以来、公私にわたり親しくさせていただいております。今回の件も大変お世話になり、感謝を申し上げます。
9月10日(火)は、ドイツのミュンヘン近郊のイサール川やガルミッシュ・パルテンキルヒェン市のロイサッハ川を視察しました。
元水利局上級エンジニアのライトバウアーさんなどにご案内をいただきました。
これらの川では、日本でも河川上流部でよく見られるような連続して設置されたコンクリート製の床止め工を撤去し、巨石を配置して水のエネルギーを減衰させるタイプの低落差の滝を連続させるような構造に転換させていました。多様な流れを可能にすることから日本でも参考になりそうな事例だと感じました。
また、急傾斜の渓流のカルトヴァッサーライネ川では、土石流対策のため川に連続して設置された古くて脆弱な砂防工の下流側に巨石を巧みに腹付けして配置することで景観の改善を図るとともに安全性の向上を図る取り組みが行われていました。これも日本でも参考になりそうな事例と考えられました。
9月11日(水)、ドイツ・オーストリア・スイスの国境のボーデン湖に伺い、コンクリート護岸を撤去して再自然化し、浜辺を再生した箇所を視察しました。
背後地に余裕のある区域において離岸堤設置と併せて直立の護岸を撤去し、粒径に配慮して礫の浜辺を造成していました。これにより、湖の波浪からの安全性は確保しつつ、人々の憩いの場を形成するとともに、生物多様性を高め、白鳥などの休息の場にもなっていました。
9月12日(木)、スイスのチューリヒ湖から流出するリマト川の河畔公園地区を視察しました。
生態コンサルタントのクロード・マイアーさんなどにご案内いただきました。
ここでは、洪水対策のため右岸側の管理用通路を切り下げて河積の拡大を図るとともに、低水護岸を撤去して水制に変え、蛇行の再生を図るとともに、巨石を使って流されてしまわないように人工的に中ノ島を造成し、多様な流れを実現し、生物多様性を高めていました。
続いて、同じくチューリヒ州内のトゥール川の中流部を視察しました。この川では、洪水対策の一環として、可能な区間では低水護岸を撤去して水制に変え、高水敷の浸食を進め河積の拡大を図るとともに、川の営力を高め、寄り州や河原を再生する取り組みが行われていました。
なお、トゥール川の中流部のクラインアンデルフィンゲン村を視察し、川沿いの住宅を洪水被害から守るため、計画高水位に余裕高を加えた高さまで住宅に防水措置を講じたり、輪中堤で囲ったりしている地域を見せていただきました。山脇さんは、「対象物保護」と呼んでいました。日本では水防災事業として住宅のかさ上げを行っているところはありますが、住宅自体を防水構造にしているのは驚きました。
夕方には、チューリヒに戻り、中央駅付近のリマト川の船着場から遊覧船に乗り、チューリヒ湖まで出ました。
川や湖の中から見るチューリヒは、リマト川の周辺に美しい古い街並みが形成され、湖の周辺には高級住宅が立ち並び、湖のはるか南には雪をかぶる3000m級のアルプスの山並みが続き、素晴らしい景観でした。平日にもかかわらず、たくさんの市民が憩いの場として活用しており、日本にはない美しさと賑わいがとても印象的でした。
9月13日(金)、午前中チューリヒ州内のライン川及びその支川のトゥール川の洪水対策の現場を視察しました。
トゥール川河口部プロジェクトリーダーのロベルト・ベンツィンガーさん、クロード・マイアーさんなどにご案内いただきました。
ライン川本川では低水護岸を撤去して水制に変えて河積拡大を図るとともに再自然化を図っていました。なお、トゥール川合流点の上流のライン川本川では、引堤や堤防かさ上げが困難なため、移動式パネルを洪水時にはめ込む形式の堤防「モバイル・レビー」をやむを得ず採用している区間があるとのことでした。
一方、トゥール川では100年以上前に直線化された複断面の川の低水護岸を撤去するとともに高水敷を掘削し、河積の拡大を図りつつ蛇行を回復するとともに、自然の営力で河原の再生を実現していました。また、堤防を大幅に引くことにより背後地の農地の安全度を高めるとともに、貴重な河道内の湿地性の森の保全を図っていました。
土地利用の状況が違うのでそのまま日本で取り入れるのは難しいですが、洪水対策と再自然化を両立する非常に大胆な取り組みと評価できるのではないかと考えられました。
なお、午後にはチューリヒ空港を立ち、フランクフルト空港を経由して翌14日(土)に羽田空港に到着し、無事帰国しました。
今回は結果として、イギリス、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、スイスの5カ国を回ることになりましたが、様々な面で大変充実した旅となりました。
各地でご案内いただいた皆さん、お支えいただいた事務方の皆さんなど関係の皆さんに心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。