【欧州河川調査④】
【欧州河川調査④】
8月18日(日)、前日にドーバー海峡の下をトンネルで通過するユーロスターでロンドンからパリに移動し、さらにこの日、パリから高速鉄道のTGVでスイスのチューリッヒに移動しました。
チューリッヒでは、1年前の視察の際にも通訳としてお世話になった滝川さんのご案内で、チューリッヒを流れるジール川の治水対策について視察しました。
滝川さんは、環境に関する執筆、講演等を行っておられる環境分野の専門家でもあり、今回、事前に工事現場の見学会に参加されるなど、ジール川の治水対策について勉強された上でご案内をいただいたとのことで、本当にありがとうございました。
アルプスの山々を水源とするジール川は、現在はチューリッヒ湖下流でチューリッヒ湖から流れ出るリマト川に合流していますが、2005年の洪水を契機として、ジール川下流の洪水被害軽減のためジール川から直接チューリッヒ湖へ洪水を流す放水トンネルやチューリッヒ駅下のジール川の暗渠部の断面拡幅など、新たな治水計画が立案され現在実施中とのことです。
まず、ジール川上流部で河川が湾曲している箇所に設けられた流木止め施設を拝見しました。約370mの区間に100本の巨大な鉄製杭を配置し、洪水時の流木を補足するというもので、日本でも九州北部豪雨で受けた流木被害の対策として、朝倉市の赤谷川などで同様の流木止めが設置されています。
続いて、流木止め下流の放水トンネル吞口側の工事現場に伺いました。すぐ近くを鉄道が走っており掘削土砂は鉄道により運搬するとのことでした。
現場では、抗口部の掘削が始まっており、TBMにより本格的な工事が始まるとのことでした。なお、付近には木製の展望台が設けられており、子供たちが楽しくトンネル工事が学べるよう、イラストを使った説明の他、展望台自体が滑り台などを兼ねた遊具となっており、我が国もこうした広報の取り組みについて大いに学ぶべきと感じました。
その後、チューリッヒ湖畔に移動し、放水トンネル吐口側の工事現場に伺いました。坑口付近の掘削も始まっており、吐口の形が見えていました。なお、放水路吐き口は、湖岸に沿って走る幹線道路やスイス鉄道と交差するルートとなるため、チャンバーで地下化され、湖の水中に放流されるなど、交通に支障が無いよう工夫しながら工事が行われていました。
この放水路トンネルは、昨年の調査でリマト川の再自然化の調査のためチューリッヒを訪れた際にお話を聞かせていただき、是非拝見したいと思っていたもので、今回滝川さんのご案内で視察し、スイスのハード対策にも触れることができて、よかったと思います。