【欧州河川調査①】

【欧州河川調査①】
8月14日(水)〜8月22日(木)、第3回の「欧州近自然川づくり調査」で、イギリス、スイスを訪れました。
「欧州近自然川づくり調査」は、河川環境の保全・創造を目指す海外の近自然河川工法の動向について調査するため学識者や研究者、行政等のメンバーにより設立されたもので、5年前の第1回調査、昨年の第2回調査に続き、団長の辻本哲郎名古屋大学名誉教授、中村太士北海道大学大学院教授、池内幸司東京大学名誉教授、国土交通省河川環境課や土木研究所の皆さん、リバーフロント研究所、水源地環境センター、国土技術研究センター等河川環境関連団体の参加者等で構成されており、今回、学識者として新たに安田浩保新潟大学研究教授が参加されました。
8月14日(水)に日本を発って、イギリス中西部にあるマンチェスターに到着し、翌日の8月15日(木)、マンチェスター北部のワイヤ川流域を視察しました。
まず、管理事務所でワイヤリバートラストのフィリップ・ロブソンさん、トーマス・マイヤーズコフさん等の専門家の皆さんから説明を受け、質疑応答を行いました。
ワイヤ川ではこれまでたびたび洪水に見舞われてきましたが、2013、2015、2016年の洪水を契機に、流域面積450㎞2のうち70haのエリアを対象としてNFM(Nature Flood Management、自然洪水管理)のプロジェクトが進められています。最初のプロジェクトは2018年から21年にかけ、リーキーダム、ヘッジロー、植林などが実施されました。リーキーダムは、ビーバーのダムのように川のなかに伐木等積み重ねたダムをつくり水の流出を遅らせるもので、ヘッジローは低い生垣で放牧されている家畜の移動を抑制することで川岸の植生が家畜に食べ尽くされることを防ぐとともに、流出の抑制効果を見込むものです。
意見交換の後、雨の中、ワイヤ川流域のリーキーダムやヘッジロー、植林などが行われている様子を見させていただきましたが、リーキーダムやヘッジローなどの施策は、比較的小規模な雨には流出を減らす効果が見込まれるものの、日本の河川で計画対象としているような大きな雨に対しては、流出抑制効果を発揮するまでは考えにくく、洪水の低減効果を見込むことは適切でないと考えられました。