足立としゆき夢だより【第292号】をお届けします
皆さん、こんにちは。
足立としゆきです。
非常に強い勢力の台風10号が九州に近づいており、明日にも九州に上陸、その後も強い勢力で日本列島を縦断するとの予測がなされています。速度が遅いことから降雨量も非常に多くなることが見込まれ、予断を許さない状況です。皆様には、くれぐれもご注意いただきますようお願い申し上げます。
また、国土交通省の各地方整備局や各地方自治体の防災担当部局の皆様には、早めの避難情報の提供や避難指示の発令、災害発生時の迅速な対応に万全を期していただきたいと思います。
さらには、建設産業分野の皆様には、災害時の緊急対応や防災活動などで出動いただくこととなりますが、安全にはご留意されご対応いただきますようお願い申し上げます。
さて、8月14日(水)〜8月22日(木)、第3回の「欧州近自然川づくり調査」で、イギリス、スイスを訪れました。
「欧州近自然川づくり調査」は、欧州各国の河川の状況や河川環境の保全・創造を目指す近自然河川工法の動向等について調査するため学識者や研究者、行政等のメンバーにより設立されたもので、5年前の第1回調査、昨年の第2回調査に続き、団長の辻本哲郎名古屋大学名誉教授、中村太士北海道大学大学院教授、池内幸司東京大学名誉教授、国土交通省河川環境課や土木研究所の皆さん、リバーフロント研究所、水源地環境センター、国土技術研究センター等河川環境関連団体の参加者の皆さんで構成されており、今回、学識者として新たに安田浩保新潟大学研究教授が参加されました。
8月14日(水)に日本を発って、イギリス中西部にあるマンチェスターに到着し、翌日の8月15日(木)、マンチェスター北部のワイヤ川流域に伺いました。
まず、管理事務所でワイヤリバートラストのフィリップ・ロブソンさん、トーマス・マイヤーズコフさん等の専門家の皆さんから説明を受け、質疑応答を行いました。
ワイヤ川ではこれまでたびたび洪水に見舞われてきましたが、2013、2015、2016年の洪水を契機に、流域面積450㎞2のうち70haのエリアを対象としてNFM(Nature Flood Management、自然洪水管理)のプロジェクトが進められています。最初のプロジェクトは2018年から21年にかけ、リーキーダム、ヘッジローが整備され、植林が実施されました。リーキーダムは、ビーバーのダムのように川のなかに伐木等積み重ねたダムをつくり水の流出を遅らせるもので、ヘッジローは低い生垣で放牧されている家畜の移動を抑制することで川岸の植生が家畜に食べ尽くされることを防ぐとともに、流出の抑制効果を見込むものです。
意見交換の後、雨の中、ワイヤ川流域のリーキーダムやヘッジロー、植林などが行われている様子を見させていただきましたが、リーキーダムやヘッジローなどの施策は、比較的小規模な雨には流出を減らす効果が見込まれるものの、日本の河川で計画対象としているような大きな雨に対しては、流出抑制効果を発揮するまでは考えにくく、洪水の低減効果を見込むことは適切でないと考えられました。
その後列車でロンドンに移動し、8月16日(金)、ロンドンの中心部を流れるテムズ川下流部のテムズバリアに伺い、イギリス環境庁のリチャード・ハンドリーさん、ナチュラルイングランドのエデル・マガークさん他、大勢の皆さんから、イギリスの河川政策や環境政策、テムズバリアの目的、構造、機能や気候変動への対応を考慮した改築計画などについてレクチャーをいただきました。日本からは土木研究所 流域水環境研究グループ長の中村圭吾さんから日本の河川政策、環境政策について発表をいただき、意見交換を行いました。丸一日の長丁場でしたが、日英双方から熱心な質疑応答があり、充実した意見交換となりました。中村圭吾さんのご縁で通訳をしていただいた内藤さんには大変お世話になりました。感謝を申し上げます。
テムズバリアは、高潮対策のために建設されたものですが、管理開始後40年を迎え老朽化が進んでいること、気候変動による新たな高潮リスクへの対応が必要となったことなどから、「テムズバリア2100計画」が策定され、現在、①既存バリアの改築、②バリアの新設、③貯留施設による代替、④閘門付きバリアへの改築、の4つの方策について検討中で、今後段階的に整備を実施していくとのことでした。
なお、テムズ川の水質に関する質疑の中で、テムズ川流域の上下水道を管理する「テムズウオーター」の経営問題が水質問題に関係していることが話題となり、興味深い情報が得られました。
8月17日(土)、ロンドンの中心部よりやや西側のテムズ川沿いにある、ロンドン・ウエットランド・センターを視察しました。
ここには、もともとヴィクトリア朝時代に設置された4つの人工の貯水池がありましたが、一時テムズ・ウオーターが所有したものの放棄され水質の悪化などの問題が発生していたため、その後ウエットランドとして再生されたもので、2000年にオープンして市民の憩いの場ともなっているとのことです。野鳥や水生生物をはじめ様々な生物のハビタットとして豊かな環境が整備されており、当日も数多くの家族連れが訪れていました。
8月18日(日)、前日にドーバー海峡の下をトンネルで通過するユーロスターでロンドンからパリに移動し、さらにこの日、パリから高速鉄道のTGVでスイスのチューリッヒに移動しました。
チューリッヒでは、1年前の視察の際にも通訳としてお世話になった滝川さんのご案内で、チューリッヒを流れるジール川の治水対策について視察しました。
滝川さんは、環境に関する執筆、講演等を行っておられる環境分野の専門家でもあり、今回、事前に工事現場の見学会に参加されるなど、ジール川の治水対策について勉強された上でご案内をいただいたとのことで、本当にありがとうございました。
アルプスの山々を水源とするジール川は、現在はチューリッヒ湖下流でチューリッヒ湖から流れ出るリマト川に合流していますが、2005年の洪水を契機として、ジール川下流やリマト川の洪水被害軽減のためジール川から直接チューリッヒ湖へ洪水を流す放水トンネルやチューリッヒ駅下のジール川の暗渠部の断面拡幅など、新たな治水計画が立案され現在実施中でありました。
まず、ジール川上流部で放水路への流木の流入を防ぐため河川が湾曲している箇所に設けられた流木止め施設を拝見しました。約370mの区間に100本の巨大な鉄製杭を配置し、洪水時の流木を補足するというもので、日本でも九州北部豪雨で受けた流木被害の対策として、福岡県朝倉市の赤谷川などで同様の流木止めが設置されています。
続いて、流木止め下流の放水トンネル吞口側の工事現場に伺いました。すぐ近くを鉄道が走っており掘削土砂は鉄道により運搬するとのことでした。
現場では、抗口部の掘削が始まっており、TBMにより本格的な工事が始まるとのことでした。なお、付近には坑口付近を見学できる木製の展望台が設けられており、子供たちが楽しくトンネル工事が学べるよう、イラストを使った説明の他、展望台自体が滑り台などを兼ねた遊具となっていました。我が国もこうした広報の取り組みについて大いに学ぶべきと感じました。
その後、チューリッヒ湖畔に移動し、放水トンネル吐口側の工事現場に伺いました。坑口付近の掘削も始まっており、吐き口が見えていました。なお、放水路吐き口は、湖岸に沿って走る幹線道路やスイス鉄道と交差するルートとなるため、チャンバーで地下のトンネルにつながり、湖の水中に放流される構造となっており、交通に支障が無いよう工夫しながら工事が行われていました。
この放水路トンネルは、昨年の調査でリマト川の再自然化の調査のためチューリッヒを訪れた際にお話を聞かせていただき、是非拝見したいと思っていたもので、今回滝川さんのご案内で視察し、スイスのハード対策にも触れることができて、よかったと思います。
8月19日(月)、チューリッヒから車で約1時間東へ向かい、チューリッヒ湖とヴァーレン湖の間にあるベンケン村を訪問し、ヴァーレン湖から流れてチューリッヒ湖にそそぐリント川の川づくりを視察しました。
はじめに、リント川を管理するリンスワークの事務所において、ラルフ・ユードさん、マルクス・ユードさんから、歴史的経緯や全体計画について説明がありました。
もともとリント川は山間部から直接チューリッヒ湖にそそいでいたのですが、かつてこの地はリント川の氾濫原であり洪水が多く貧しい地域であったため、H.K.エッシャーの提案によりリント川をいったん上流のヴァーレン湖に流入させ、土砂を落としたのちにチューリッヒ湖に流すよう、ヴァーレン湖からチューリッヒ湖に直線化した河道の付け替え工事が行われました。なお、このためヴァーレン湖の上流部をもともとのリント川ではなくエッシャー川と呼んでいるとのことでした。
この工事により水害は減りましたが、河川が直線化され自然が失われたことと、近年の気候変動などによる超過洪水対策が必要になったことなどから、リント川から超過洪水を流す放流水路を新たに設置するとともに、河道を拡幅して再自然化を行ったとのことでした。なお、超過洪水については1/300を考えているとのことでした。
その後、リント川の現地に伺い、超過洪水を流すためのゲートや、2か所で河道を大きく拡張して「わんど」のようなハビタットが作られた箇所、河岸を自然石などで再自然化している状況、動物が移動するためにコリドーとして設置された草地などを視察しました。
ベンケン村の視察の後、さらに車で3時間ほどかけて、スイス南部の高級リゾート地として有名なサン・モリッツの近くにあるベーバー村に移動し、翌日視察するイン川のレクチャーを受けました。
ここで、欧州においても近自然川づくりの草分けで第一人者である「伝説の人」、クリスチャン・ゲルディさんにお会いすることができました。私はこれまでお会いしたことはなかったので、ゲルディさんのお話しを伺うことができ、本当にうれしく思いました。
ゲルディさんと共に、この地域を流れるイン川の近自然川づくりの仕事をされている、環境専門家のピオ・ピッチさん、トーマス・フォン・ヴィールさんから、翌日視察予定のイン川について説明を受け、ゲルディさんをまじえて意見交換を行いました。
8月20日(火)、ゲルディさんやピオさんらの案内で、午前午後併せて5時間ほどかけて、イン川やフラッツ川、旧フラッツ川を踏査しました。
イン川と支川フラッツ川は、もともとべーバー村の上流にあるサメーダン村付近で合流していましたが、近年の洪水の頻発への対策としてフラッツ川の合流点を空港を迂回して下流のべーバー村付近に付け替えることとし、新たなフラッツ川を開削して、もとのフラッツ川は小川として残すこととなりました。これにより空港の浸水被害が減少するとともに、イン川やフラッツ川、旧フラッツ川の再自然化が図られたとのことです。
いずれの河川も河岸を自然石の石積としており、河畔林が繁茂するなど優れた再自然化が図られていました。また、堤防はゆるやかな緩傾斜となっていて周囲の農地と一体化した景観となっていました。イン川では堤防を撤去して外側に新たな堤防を築造し、その間が湿地化されるなどダイナミックな再自然化が行われていました。
我が国でも河川改修や災害復旧工事と併せて多自然川づくりが行われていますが、その数段上をゆく抜本的な治水対策として別川付替えによる河川改修と近自然川づくりが行われている状況に驚きました。
今回のスイスのリント川流域とイン川流域の視察を通じて、治水対策と近自然川づくりが一体的に実施されている状況を確認することができ、我が国の流域治水の取り組みと多自然川づくりの一体的推進にも大いに参考となると感じました。 また、スイスの河川自体が進化を惜しまず治水・環境の両面で発展してきていることも実感できました。超過洪水対策として1/300で取り組んでいることもわかりました。我が国も、スイスを見習い、流域治水という考え方を進める中で、超過洪水対策やネイチャーポジティブなど新たな課題にも取り組み、河川環境の保全や改善にも取り組んでいただきたいと思います。
今回、9日間と長丁場の調査でしたが、イギリスやスイスでの近自然川づくりの取り組みの現場をじっくりと見ることができました。また、イギリスやスイスの担当者の皆さんと有意義な情報交換、意見交換をすることもできました。 現地視察に関する調整の労をとっていただいた、国交省やリバーフロント研究所の皆様、本当にありがとうございました。また、ご同行いただきました先生方や調査団の皆様、活発なご議論、ありがとうございました。
以下、最近の動きを報告します。
【国会の動き】
8月8日(木) 、国会閉会中ではありましたが、参議院の財政金融委員会の理事懇談会が開催され、7月末の日銀の政策決定会合以降、乱高下している株価や為替レートなどを踏まえ、日銀から状況説明をいただきました。それを踏まえて財政金融委員会において閉会中審査を行う方向で意見交換を行いました。
8月23日(金)、参議院の財政金融委員会の閉会中審査が行われました。財務省から鈴木俊一財務大臣、日銀からは植田日銀総裁などが出席され、日銀の政策決定会合以降の経済情勢などについて2時間半にわたり活発な質疑が行われました。
国会閉会中にもかかわらず、ご出席いただいた財務省や日銀の皆様、各理事や委員の皆様に、委員長として深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。
【自民党の動き】
8月7日(水)、新しい国道1号バイパス建設促進議員連盟で、西脇京都府知事、三日月滋賀県知事、松井京都市長、佐藤大津市長による国土交通省の堂故副大臣、財務省の菅野主計官への申し入れに参加するとともに、その後開催された総会にも出席しました。
8月26日(月)、自民党の「砂防事業促進議員連盟」の現地視察会が行われ、群馬県内の浅間山の火山砂防事業や吾妻川流域の砂防事業を、会長の鈴木俊一財務大臣、遠藤利明副会長、ご地元の小渕優子衆議院議員をはじめたくさんの自民党国会議員とともに視察を行いました。
浅間山では、火山噴火緊急減災対策で整備した大規模な砂防堰堤や、無人で自動化した重機による最先端技術の施工を視察しました。
また、吾妻川流域では令和元年台風19号により発生した土砂災害に対し整備した床固(とこがため)群を視察しました。
続いて、利根川水系吾妻川にある群馬県長野原町の八ッ場ダムに伺いました。関東地方整備局の石田河川計画課長にご案内いただきました。
このダムは、利根川下流部の洪水調節や都市用水の供給、発電などを目的とした多目的ダムで、ダム高116.0m、総貯水容量1億750万 m³の重力式コンクリートダムです。
私は若い頃から、係員、係長、課長補佐、専門官、事業調整官、課長、局長、技監と、建設省・国土交通省の8つのポストで八ッ場ダム事業を担当しました。
八ッ場ダムは、平成21年の民主党への政権交代に伴い一旦中止され、再度の政権交代に伴い、私が水管理・国土保全局長の平成25年に改めて本体工事に着工したもので、本体工事を完成し、試験湛水中ではありましたが、平成元年の台風19号に伴う出水の際に75百万m³の洪水を貯め込み、下流利根川の洪水防御に役に立ちました。何とか間に合って本当に良かったです。
その他、自民党の国土交通部会、整備新幹線等鉄道調査会、沖縄振興調査会などに出席しました。
【都内の動き】
8月9日(金) 、都内九段下の「けんざか茂範」事務所で「事務所開き」が行われました。
代表世話人の谷口元国土交通省事務次官のご挨拶に続き、佐藤信秋参議院議員から激励のご挨拶がありました。続いて、私からのお祝いのご挨拶の後、けんざか茂範さんから力強い決意のご挨拶がありました。
ご出席いただきました建設分野の各団体の皆様、国土交通省OBの皆様、ゼネコンの関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。
なお、これからけんざか茂範さんの活動が本格化します。皆さん、暖かいご支援をよろしくお願いいたします。
【地方の動き】
8月3日(土)、豊岡市で開催された「北近畿豊岡自動車道・山陰近畿自動車道 早期実現促進大会」に出席しました。
オープニングセレモニーとして、地元の八鹿高校音楽部の素晴らしい合唱が披露されました。
続いて大会にあたり、谷公一衆議院議員、末松信介参議院議員、加田裕之参議院議員、齋藤兵庫県知事らとともにお祝いのご挨拶をさせていただきました。
私からは、平成18年7月に近畿地方整備局企画部長として北近畿豊岡自動車道の春日〜和田山間の開通式典に出席させていただいたことをご紹介し、私の母の出身地である朝来市和田山町と阪神エリアが直結したことの感慨についてお話しをさせていただきました。また、来月23日には豊岡道路の但馬空港IC~豊岡出石IC間(延長2.0km)が開通します。あとは豊岡出石IC ~ 豊岡北ICの5.1kmが完成すれば、待望の全線開通となります。
また、山陰近畿自動車道は浜坂道路Ⅱ期(延長7.6km)、竹野道路(延長4.9km)及び城崎道路(延長7.4km)の整備が急がれます。全線開通に向けて必要な道路整備予算の確保と国土強靱化の更なる推進に向け、全力で取り組んで行くことをお約束させていただきました。
その後、国土交通省山本道路局長から基調講演があり、結びに大会決議案が採択され終了しました。
会場には、各市町から早期実現を願う関係者がたくさんお集まりで、建設業界からも兵庫県建設業協会の川嶋元会長や中川豊岡支部長、株本浜坂支部長、福井南但支部長をはじめ関係の皆さんに多数お集まりいただきました。ありがとうございました。
なお、鳥取空港からご案内をいただきました中川豊岡支部長、ありがとうございました。
続いて、兵庫県建設業協会南但支部会館の改修工事完成内覧会と祝賀会に福井支部長にご案内いただき、谷公一衆議院議員、藤田県議、三木兵庫県建設業協会長とともに出席しました。
現会館は、昭和49年5月に鉄筋コンクリート2階建(一部3階)で完成した建物で、今回の改修で1階には会員会議室や役員室、2階には大会議室や講師控室等も整備され、機能的な会館となっていました。
なお、こちらにも兵庫県建設業協会の中川豊岡支部長にご同行いただきました。ありがとうございました。
8月5日(月)、我が事務所で企画した「地域インフラ研修会」を開催し、有志の皆さんとともに岐阜県に伺いました。
最初に、岐阜県御嵩町と八百津町にまたがる木曽川本川中流部に建設中の新丸山ダムに伺いました。
新丸山ダムは、国土交通省中部地方整備局がダム再生事業により実施している直轄ダムです。堤高 98.2 mの既設の重力式コンクリートダムの丸山ダムを、下流側47.5mの地点で20.2mかさ上げし、堤高118.4mの重力式コンクリートダムとして再生する事業です。
現地では、中部地方整備局の加納新丸山ダム工事事務所長、吉岡河川部長、大林·大本·市川JVの佐々木所長(大林組)からご説明をいただきました。
新丸山ダムは、平成21年の政権交代に伴い事業が一旦中止となり、私が中部地方整備局長時代の平成23年から24年に検証を進め、平成25年7月に本省の水管理・国土保全局長の時に事業の継続を決定した思い出深い事業です。
既設ダムを運用しながらのダム再生であるため大変技術的にも難しい事業ですが、すでに仮排水路トンネルが完成し、左岸側の基礎掘削が始まっており、これから本格的なダム本体工事が始まりますので、大いに楽しみです。
続いて、岐阜県美濃市にある現存する我が国最古の近代吊橋で国指定重要文化財の「美濃橋」に伺いました。現地では、武藤美濃市長をはじめ美濃市の皆さんにご案内いただきました。
美濃橋は、大正4年8月の起工で、翌5年8月に竣工しており、橋長113m、支間116m、幅員3.1mの単径間補剛吊桁の吊り橋です。両岸の主塔は高さ9.8mの鉄筋コンクリート造で、左岸は大きな岩塊をアンカーレイジとして主ケーブルが固定され、右岸には田んぼの中に玉石積みのコンクリート構造物のアンカーレイジが設けられ主ケーブルが固定されています。その主ケーブルから吊ケーブルで吊されたトラス構造の橋桁に床板材が設置され、かつては自動車も走行していたとのことですが、現在は人道橋となっています。なお、令和2年に熊谷組により大改修が行われたとのことでした。
吊り橋の下では、大多数は外国の方とのことですが、長良川で川遊びをする皆さんで賑わっていました。
8月6日(火)、建設中の東海環状自動車道沿いを走行しながら視察を行い、工事箇所について中部地域づくり協会の岩崎専務理事からご説明いただきました。ダイナミックな工事現場に驚きました。
その後、水資源機構中部支社の花田さんと合流し、徳山ダムサイトで國枝所長、国土交通省の齋藤木曽川上流河川事務所長に合流いただき、2008年に完成した徳山ダムと、徳山ダムで開発した都市用水を名古屋に運ぶため計画されている木曽川水系連絡導水路事業などについてご説明をいただきました。
徳山ダムは、岐阜県揖斐郡揖斐川町の揖斐川最上流部に建設された総貯水容量・堤体積ともに日本一のロックフィルダムで、総貯水容量は浜名湖の約2倍の6億6,000万㎥、堤体積が1.370万㎥もあり、いずれも日本一です。
同行いただいた大学の同級生の藤田さんが工事事務所長として携わられたダムで、私もコンクリートダムとして日本最大の堤体積200万㎥のダム建設に携わりましたので、同じ研究室の同級生でコンクリートダムとフィルダムの堤体積日本一を手がけたことになります。
なお、今回の「地域インフラ研修会」の事務局としてご調整いただきました木下さん、松井さん、そしてご参加いただきましたすべての皆さんに、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
8月11日(日)、富山県南砺市で行われた「綿貫民輔寿像完成除幕式」に橘慶一郎衆議院議員、堂故茂参議院議員、野上浩太郎参議院議員、佐藤信秋参議院議員とともに出席し、お祝いのご挨拶をさせていただきました。北陸地方整備局からも高松局長、大角利賀ダム工事事務所長が出席されました。
このような会を企画いただきました「綿貫民輔顕彰会」の田中南砺市長をはじめご地元の関係の皆様に感謝を申し上げます。
綿貫先生ご自身は残念ながらご欠席でしたが、親族の方からご挨拶をいただきました。先生ご自身は、ご自宅でリモートでご覧になっているとのことでした。
その後、堂故茂国土交通副大臣とともに利賀ダムのダムサイトが一望できる展望所に伺い、利賀ダム工事事務所の河村副所長ほか職員の皆さんから、利賀ダム本体工事や押場貯水池法面対策工事について説明をいただきました。
利賀ダム建設事業は、私が開発課の課長補佐のときの平成5年に建設に着手したものですが、政権交代により検証対象となり、残念ながら私が水管理・国土保全局長の際に継続を打ち出すことができず時間がかかってしまいました。申し訳ない思いで一杯ですが、今回の本体工事着手により本格的な工事の着工を迎えることになり一安心です。
なお、利賀ダム本体工事は清水建設・鴻池組JV、押場貯水地法面対策工事は大成・東急・岩田地崎JVが施工しています
続いて、富山県砺波市で行われた「利賀ダム本体並びに押場貯水池法面対策着工式」に、堂故国土交通副大臣、新田富山県知事、野上浩太郎参議院議員、橘慶一郎衆議院議員、田畑裕明衆議院議員、佐藤信秋参議院議員らとともに出席し、お祝いのご挨拶と鍬入れをさせていただきました。
式典には、国土交通省本省から笠井治水課長、北陸地方整備局の高松局長、流域各市長、清水建設、大成建設ほか施工業者の皆さんなど多くの皆さんが参加されていました。
なお、除幕式、利賀ダムの現地、着工式に、富山県建設業協会砺波支部の松井さんにご同行いただきました。ありがとうございました。
【事務局より】
自民党の機関紙「自由民主」のコラム「私のいやし」に、『ダムが私にとってのいやし』と題して足立議員が寄稿されましたので、ご紹介させていただきます。
『ダムが私にとってのいやし』
私は、建設省・国土交通省でダム建設に従事してきた「ダム屋」と呼ばれる技術者です。私にとりましては、全国のダム屋の皆さんが情熱を傾けて大自然の中で建設に取り組んだアーチ式コンクリートダム、重力式コンクリートダム、ロックフィルダム等の現地を訪れることが大きないやしとなっています。写真は皆さんよくご存知の富山県の黒部ダムですが、訪れた際には、ダムのバルブから轟轟と放流が行われており、心がワクワクし、元気をいただきました。
写真については、下記URLからご覧いただけます。是非ご覧下さい。
https://www.adachi-toshiyuki.jp/wp-content/uploads/014328cb05d580266c59f5a6a8dfa630.pdf