足立としゆき夢だより【第75号】をお届けします
皆さん、こんにちは。
足立としゆきです。
九州北部では、7月5~6日に線状降水帯を原因とする大雨が発生し、福岡県朝倉市及び東峰村、大分県日田市などで甚大な被害が発生しました。また、長崎県の壱岐市では、6月末と併せて2度線状降水帯による大雨の被害に見舞われました。
亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被害にあわれた皆様に衷心よりお見舞いを申し上げます。
私は、7月15~17日にかけてこれらの大雨で被害を受けた地域を訪れ、被災状況の把握に努めました。その結果を取り急ぎ報告します。
【7月15日大分県日田市】
最初に訪れたのは、大分県日田市です。日田市では、24時間最大雨量370.0mm、最大1時間降水量87.5mmを記録しています。
案内は、大分県日田市の出身で筑後川河川事務所にも在籍した国土交通省OBの後藤さんにお願いしました。
まず、大分県建設業協会の日田支部に伺い、原田支部長をはじめ幹部の皆さんから現況報告をいただくとともに、私から激励のご挨拶をさせていただきました。
その後、日田市内の花月川のJR九大線の橋梁の落橋現場に伺いました。あっけなく橋脚が押し倒されている現場に驚きました。なお、復旧に3年かかるとJRが発表しましたが、早期復旧が強く要請されています。
引き続き、山腹崩壊に伴って天然ダムを形成している小野川の土砂災害の現場に伺いました。高さ200m、幅300m、約30万㎥の土砂崩壊で天然ダムが形成されていますが、ちょうど仮設道路が開通し、それに伴って避難指示が解除されており、復旧・復興に向け大きな一歩を踏み出していました。
現在は天然ダムの水位を下げるための排水路の拡幅整備が進められており、現地で案内いただいた河津建設の河津社長さんをはじめ地元の建設業の皆さんが、厳しい現場状況ではありましたが、全力で懸命に頑張っておられました。とにかく頭が下がる思いでした。
その後、平成24年の九州北部豪雨の復旧で行われた激甚災害対策特別緊急事業の現場に伺いました。私が、水管理・国土保全局長として、その着工式に参加した思い出深い現場です。現場を見させていただき、整備をした区間はしっかり持ちこたえており、前回豪雨に比べ1.5倍の雨量であったにもかかわらず浸水被害が大幅に軽減されるなど大きな効果を発揮していました。整備効果がなかったかのようなことを主張する人もいますが、全くそれは間違いであることが、現場に行けば明らかでした。
【7月16日長崎県壱岐市】
16日日曜日、博多港からフェリーで長崎県壱岐市の芦辺港に移動し、今回二度にわたり大雨に見舞われ島の北部を中心に線状降水帯によって土砂災害被害が多数発生した壱岐の被災現場に入りました
案内は、壱岐市の中原副市長、長崎県建設業協会壱岐支部の中原支部長にお願いしました。
壱岐では、まず中原副市長から壱岐市の被害状況について概要説明をいただきました。一度目の大雨は、6月29日から連続雨量が468mmで、最大の時間雨量は107mm、二度目の大雨は、7月5日から連続雨量が416mmで、最大の時間雨量が119mmとのことで、線状降水帯によってこれまで経験したことのないような大雨に二度も見舞われたとのことでした。これによって、島北部の随所で山腹崩壊や法崩れが発生しています。
被災現場としては、本堂が土砂崩れで倒壊した神岳山金蔵寺、旧勝本町の市道の被災箇所、土砂崩れで被災した旧勝本町塩谷地区の民家などを訪れました。いずれも、犠牲者が出なかったのが不思議なぐらい大きな被害が発生していました。また、農地については随所で法崩れが発生していました
その後、ジェットフォイルという高速艇で芦辺港から博多港に戻り、福岡市内で日建連九州支部の河野支部長をはじめ各社の皆さんと今回の大雨被害への対応状況について意見交換をさせていただき、会員各社の対応状況について伺いました。
水機構で工事中の小石原川ダムにおいて、本体工事の仮締め切りを突破して洪水が流入し基礎掘削の終わった本体盛り立て現場が水没してしまったことや、関連事業の木和田導水路の水路トンネルが水没してしまったことなどを伺いました。
【7月17日福岡県朝倉市】
7月17日午前中、九州北部の大雨で被災した地域にある水資源機構の寺内ダム、小石原川ダムに伺いました。寺内ダムは管理中のダム、小石原川ダムは建設中のダムです
案内は、水資源機構の元永筑後川局長、小石原川ダムの日野所長、寺内ダムの坂井管理所長、小石原川ダムの施工を担当している本体JVの鹿島建設の高田常務、九州支店の河野支店長をはじめ関係者の皆さんにお願いしました。
寺内ダムは、高さが83mのロックフィルダムで、直前まで渇水であったこともあって洪水調節効果が絶大で、100mmを超える雨に2時間連続で見舞われましたが、流域からの最大流入量888㎥/sのうち878㎥/sを貯め込み、下流に10㎥/sしか放流をしませんでした。
その後、ダム貯水量の増加とともに放流量を増やしましたが、400㎥/sを超える流入量に対して最大120㎥/sの放流しかしておらず、下流の洪水軽減に絶大な効果を発揮しました。
また、貯水池内には13千㎥という大量の流木が貯まりましたが、逆に言うとそれだけの量の流木がダム下流に流れるのを阻止する大きな効果をあげました。
他の河川では、洪水と流木で大きな被害を生じているのに対して、寺内ダムの下流の佐田川ではほとんど被害がなく、寺内ダムが大きな効果をあげたと考えられます。
一方、小石原川ダムは本体工事中の高さ139mのロックフィルダムで、堤体部の基礎掘削を終え、まさにダム堤体の盛り立てを開始しようとしている段階でした。しかし、今回の大雨で川の水を切り替えていた仮排水トンネルが吐ききれず、締め切りを越えて本体工事の現場に大量の水が入ってしまい、水没してしまいました。
それを本体JVの皆さんは7日間で復旧し、現場ではすでに盛り立て開始前の準備工事が着々と進められていました。その素早さとたくましさには敬服いたしました。
なお、大雨の際に工事用の道路が各地で寸断され、現場には100人を超える作業員の皆さんが取り残され、翌日まで孤立していたそうですが、全員無事に帰還したとも聞きました。本当にご苦労さまでした。
今回の寺内ダムの効果を考えても、工事中の小石原川ダムの早期完成を心から祈念いたします。
続いて17日午後、九州北部の大雨で多数の犠牲者を出した福岡県朝倉市に伺いました。朝倉市では、24時間最大雨量545.5mm、最大1時間降水量129.5mmを記録しています。
まず、朝倉土木協同組合に伺い、福岡県議会の林議員と栗原議員とともに、協同組合の平田代表理事から被災状況と組合に参加している各社の活動状況について伺いました。
その後、桂川、奈良ケ谷川、北川、寒水川、白木谷川、赤谷川と順次東に向かいながら、被災箇所を視察しました。案内は、林県議、朝倉土木協同組合の田中土木事業推進員、筑水会建設協同組合の森部会長などにお願いしました。
最初に、マスコミでも頻繁に紹介された、桂川の沿川の比良松中学の被災箇所に伺いました。河岸が侵食され体育館の杭基礎がむき出しになっている状況に、流速の大きさを強く感じました。
奈良ケ谷川は、ため池が決壊した川で、下流部の三連水車のあたりまで大量の流木を散乱させていました。おそらく、ため池に貯まっていた大量の流木が、決壊に伴って一気に流れ出したのではないかと考えられました。上流部の決壊したため池まで参りましたが、土堤が大きくえぐられ、跡形もないような有様でした。水と流木のエネルギーの大きさに驚かされました。
とりわけ甚大な被害があったのが、最も東寄りの赤谷川でした。
赤谷川は、福岡県知事から支川の大山川と乙石川と合わせて国が代行して復旧するよう要請されている川で、ものすごい数の自衛隊や警察・消防の皆さんが行方不明者の捜索を懸命に行っていました。乙石川の合流点まで復旧中の道路をたどって遡りましたが、谷いっぱい川が流れ様相が一変しているそうで、流失家屋や倒壊家屋が随所に見られ、私のこれまでの経験でも見たことのない激烈な被災現場でした。
権限代行でぜひ国によって本格的な復旧・復興を迅速にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
赤谷川の最下流部の視察を行っているときに、うきは市の高木市長にお会いしました。市民の方が赤谷川上流部で行方不明になっておられるとのことで、心配して駆け付けておられました。
なお、赤谷川の現場にいる時にエリアメールで同行者の携帯に一斉に緊急連絡が入りました。雨が予想されるので、捜索をしている方々やボランティアの皆さんも退去するようにとの、緊急の避難指示でした。こうした連絡体制が出来上がっているのは大きな安心材料でした。
【終わりに】
7月15日から3日間、大分県日田市、長崎県壱岐市、福岡県朝倉市の被災地を回らせていただきました。ご案内いただいた皆様には心から感謝を申し上げます。
各地の復旧・復興に、私自身も関係の皆様とともに頑張らねばならないと決意を新たにいたしました。皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。